我社は、創業以来、三十余年にわたって儀礼用調度品の製造、卸を中心とした事業を展開してきました。しかし私は、この仕事を、いわゆる伝統産業としてはとらえていません。どんなに時代が変わっても、人間が人間である以上、冠婚葬祭や贈答などのセレモニーやコミュニケーションは生き続けます。そして日本人が日本人である以上、それにふさわしい文化や美学があるべきです。そうしたニーズに常に応えていくのが、我社の使命と考えるからです。
 我社を訪れる人は、平均年齢二十代というスタッフの若さに驚くようです。でも、その若さが、近年、ユニークな和雑貨の開発やテキスタイルなど、新たな事業展開となって花ひらき始めました。
 政治、経済、社会、あらゆるものが大きく変わっていくなかで、「変わらないものを変えていきたい」、これが、ヤタニの主張です。

代表取締役社長 矢谷 正明

 二十一世紀、国際化時代がやってきました。
 多様な文化と文化の交流が進めば進むほど、逆に求められるのは日本人としてのアイデンティティの確立ではないだろうか。ハイテク時代という。コンピュータやロボットがさまざまな仕事を代行してくれる時代、逆に求められるのは、人間の手でしか成し得ない仕事、人間の心でしか表現できない美学、美意識ではないだろうか。
 もっと楽しく、もっと心地よく、もっと美しいライフステージに・・・
 ヤタニは新しい夢を育んでいきたい。
京都の企業、しかも風呂敷やふくさなど伝統の品を扱う仕事というと、どうしても「古い」というイメージが先に立つ。でも、ちょっと待ってほしい。なぜ、そうした品々が絶えることなく現代にまで受け継がれてきたのかと・・・。
 それは、伝統とは、実は常に新しいものだからではないだろうか。ただ守り伝えるだけなら、いつか滅びていく。でも、時代時代のセンスやトレンドを巧みに採り入れながら進化していくからこそ、生き残る・・・。
 ヤタニはそんな文化を伝えたい。
たとえば、ここに一枚の風呂敷がある。ただの四角い布なのに、ものを包んだり運んだりする実用品であると同時に、染織の技を凝らして美しい文様を施した美術工芸品でもある。シンプルな形であるだけに、かえって使い方によってさまざまな用途に応用できる。しかも、使い捨てでなくリサイクルできる、地球に優しい品である。
 私たちが昔から伝えてきた、「和の文化」こそ、もしかしたら現代に最も必要なものではないだろうか・・・。
 ヤタニはそんな美学にこだわりたい。

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